今日のスタック解決

ノーカット版 密閉教室 (講談社BOX)

ノーカット版 密閉教室 (講談社BOX)


新本格ミステリの父、宇山日出臣がこよなく愛した、法月綸太郎の原点中の原点!
本書は、法月綸太郎のデビュー作「密室教室」のオリジナル版である。教室にあるべきはずの48の机と椅子がすべて消え、代りにコピイされた遺書と級友の死体だけが残されていた。しかも教室はガムテープで周到に目張りされ、密室と化していたのだ。受験校3年の工藤順也は熱狂的な探偵小説の愛好家だ。自殺か他殺か。彼が動くにつれ事件は昏迷度を深め、ついに彼がたどり着いた苦い真実とは……。本格ミステリと青春小説の美しくも哀切なキメラ。<『ノーカット版 密閉教室』ハードカバー版より抜粋>
これは、宇山氏の、宇山氏による、宇山氏のための本である法月綸太郎
※本書は、2002年に刊行された、ハードカバー版『ノーカット版 密閉教室』に加筆・修正、及びあとがきを加えたものです。

密閉教室 (講談社文庫)

密閉教室 (講談社文庫)


せっかくなので読み比べてみた。
ノーカット版の方が好み。文章の稚拙さが物語に非常にマッチしている。
文庫版のほうが綺麗にまとまっていて読みやすいんだけどね。
しかしこういう作風の本も書いてたのか。(と言っても『法月綸太郎の冒険』しか読んでないが)
法月綸太郎佐藤友哉を賞賛してた訳が分かった気がする。この二人、似てるわ。
 

このできそこないの作文もどきのの中に、私が失った何か大切なものが宿っているかどうかはわからない。
今の私は、そんなものはないと思うけれど、宇山氏にとっては、そうではないのだろう。
もしここから失われたものがあるとすれば、それはたぶん私よりも、宇山日出臣という人にとって、より重要な何かだったに違いない。
 だからこれは、宇山氏の、宇山氏による、宇山氏のための本である。
十五年の月日を隔てて置いた合わせ鏡のように、二つの本の間を行き交う無数のこだまの中から、朧に浮かび上がってくるシルエットは、作者ではなく、黒衣に扮した一人の編集者の横顔にほかならない。ここから失われた大切な何かも、そのかわりに授けられたもっと大切な何かも、すべては宇山日出臣という編集者に帰すべきものなのだから。今の私に言えることは、それぐらいしかない。


   ピース。
   -法月綸太郎『ノーカット版密閉教室』まえがき-

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2007年度解決数 62冊